耳に残る、女性の声を振り払い、
気を取り直して買い物を続ける。
いつもは冷蔵庫の中身をチェックしてから買い物に出るの
だが、この日は忘れてきたので、
再度、生鮮食品売り場をチェック。毎朝食べるリンゴは
もう1個買っておいた方がよかったかなと思いながら、
1つ178円もして、しかも、そうきれいでないリンゴを
ここで4つも買うのもなあ、と、ためらっていると、
初夏らしい、白いレースのカーディガンをもまとった
三十代と思われる女性がすっと横に立ち、
売り場に4つ残っていた、宮崎産マンゴーを手にして
選び始めた。
ご存知のとおり、宮崎産のマンゴーは高級品である。
同じその日、コープの注文書をながめていて、
タイ産マンゴーが399円なのに、宮崎産がなんと
2980円もするのに度肝を抜かれたところだった。
タイ産の方がグラム数が多いにもかかわらず、である。
スーパーのマンゴーの値段は、と見ると、
やはり同じ2980円なのだった。
それを、女性は涼しい顔で選ぶと、なんと2つ両手に持ち、
そのまま軽やかな足取りでレジに向かった。
こんなの2つも買う人、いるんだあ。
2つだと6000円だよ。お釣りがたったの40円だよ。
女性のお母さんの好物なのかもね、母の日だし、
とも思ってみたが、
1つ178円のりんごをもう1個買い足すかどうか迷っていた
自分が、なんだかすごくしみったれに思えた。
思い切って(?)4つ買い、レジに並んだが、
かごいっぱいの買い物は、しめて2千円とちょっと。
買えるのよ、私にだって。2980円のマンゴー。だけど、
買わない。いや、やっぱり買えない、298円のレタスも。
つくづく、お金と時間の使い方は、
その人をあらわすものだと思う。
いつものように買い物を済ませ、いつものような夕食作り。
夫と太郎と次郎も、いつものように食べる。
義母と母には、ちょっと変わった品種のカーネーションの
鉢植えを送っていたが、
「ねえ。今日って母の日だったよね?」と家族に尋ねても、
「ああ、うん」という返事が、あったりなかったり。
その日アートクラフトフェアで買った、ガラスの一輪挿しに
飾られるカーネーションは、幻に終わった。
まあね。母のありがたみなんて
気づかないうちが幸せなんだろうけどね。
一輪挿しは、太郎次郎のリビング野球の被害に遭わないよう
今も棚の奥に避難中である。
日の目を見るのは、いつのことになるかしらん。